真夏の沼

<前回までのあらすじ>
古寺を囲む雑木林の中に佇む沼。子供の頃の思い出を頼りに友人と久しぶりに訪れた私は・・・



かなり奥まで進んだのだけれど足下の地面は乾いている。
沼は干上がってしまったのだろうか。

薄暗くなった空気に中で慎重に進む方向を確認しながら草を払って行くと、急に生えている雑草の種類が変わり沼のほとりにたどり着いた。

沼はやはりずいぶんと水が減り、水際までは葦が茂っていてとても行けそうになかった。
陽が完全に雑木林の陰に隠れ、辺りには夜の気配が忍び寄って来ていた。
どこかでカエルが鳴いている。
耳元から足元まで無数の蚊が飛び交っている。

「おい、もう帰ろうぜ」
友人が沼の方を仰ぎ見ながら呟いた。
「気味が悪いよ」

「そうだね」
私も蚊にそうとう刺され、たまらなかったので引き返す事にした。

私達が今来た足場を戻り始めた時

ガサササササササササササササササ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とすぐ近くの雑草の中を何かが走る音がした。

ビックリして立ち止まる友人。
私も驚いて音のした方向を見、背後を確認する。

音がした場所は、背の高い雑草に囲まれていて何も見えない。
後ろにはまだ沼岸の葦が見える。

耳を澄ます。
黒い霧が立ち込めるように、夜が雑木林の方から流れてくる。

「何か」は動かない。
音がしない。

「タヌキかな?鳥かもな」
と友人。

イタチや野良犬って事もありえる。

それにしても動かない。

どうしたんだろう?警戒しているのか?それとも風のせいか?気のせい?

立ち止まるとたちまち蚊が集まってくる。
「痒いよ。早く行こう」
私が言うと、ああ、と返事をして友人が歩き始める。

3,4歩踏み出したとたん  また

ガサササササ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と音がした。
鳥では無い、多分ある程度の重さのある動物の走る音。

思い切って手にしていた木の棒で音のする側の草を払ってみた。
動物なら逃げるだろう。

しかし自分達が草をなぎ倒す音以外何も動く気配が無い。
友人も草を掻き分けて何がいるのか探している。

すると今度は反対側
今背にしている方向の草の中をこちらに向かって走って来る音がする

沼から斜めに走るように近づいて来る音

ガサササササササササササササササ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これは   あきらかに「人間」くらいの大きさの何かが走る音だ。

ゾッとして振り返る。
友人も振り返る。

音が、止まった。

そして 



「ねえ、これさぁ」
突然子供の声がした。


「わあ!」
驚いて走り出す友人。

自分も動転して友人を押しのけるように走った。



ようやく停めてあった車の中に戻り、沼を遠ざかる。

「なんだよあれ?」
無言で運転をする友人の隣で私が聞くと

「子供が いたんだよ・・・」
と友人

「まさか カエルの声かなんかの聞き間違い・・・」

私がそう言った時、
友人が自分の白いTシャツの裾を見てみろと指差した


そこには泥だらけの小さな子供の手の跡が


今年の夏の出来事です


では、また。


「都市伝説101話」
[PR]
by gqgweb | 2004-07-24 10:53 | ■日常感想